
こんにちは!
いわつか歯科クリニック副院長の岩塚久です。
歯周病は「歯ぐきの病気」というイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし実際には、歯周病は細菌によって引き起こされる感染症です。歯ぐきが腫れたり出血したりするだけではなく、進行すると歯を支えている骨を溶かし、最終的には歯が抜けてしまうこともある非常に怖い病気です。
厚生労働省の調査でも、多くの成人が何らかの歯周病の症状を抱えているとされており、日本人が歯を失う原因の上位にも挙げられています。それにもかかわらず、「年齢のせいだから仕方がない」「歯ぐきから血が出ても痛くないから大丈夫」と考え、治療を受けないまま放置してしまう方も少なくありません。
歯周病が怖い理由は、初期の段階ではほとんど自覚症状がないことです。痛みを感じる頃にはすでに病気が進行しているケースも多く、気付いたときには歯を支える骨が大きく失われていることもあります。また、歯周病菌はお口の中だけにとどまらず、血液を介して全身へ影響を及ぼすことも明らかになっており、糖尿病や心血管疾患、誤嚥性肺炎などとの関連も注目されています。
さらに、歯周病は人から人へ細菌がうつる可能性がある感染症でもあります。家族やパートナーとの食器の共有や唾液を介した接触によって歯周病菌が移ることがあり、家族全体で予防に取り組むことが大切になります。
この記事では、歯周病が感染症といわれる理由や感染経路、進行すると起こるリスク、予防方法について詳しく解説します。
◆◇ 歯周病はなぜ感染症といわれるのか
歯周病は、歯周病菌と呼ばれる細菌による感染症です。
私たちの口の中には300〜700種類もの細菌が存在しているといわれています。そのすべてが悪い細菌というわけではありませんが、その中には歯周病の原因となる細菌も含まれています。
歯磨きが不十分になると、歯の表面にはプラークと呼ばれる細菌の塊が付着します。プラークは食べかすではなく、多数の細菌が集まってできた細菌のかたまりです。この中で歯周病菌が増殖すると、歯ぐきに炎症が起こり始めます。
歯周病菌は毒素を出しながら歯ぐきへ侵入し、体の免疫反応を引き起こします。その結果、歯ぐきは赤く腫れ、歯磨きの際に出血しやすくなります。この段階が歯肉炎です。
さらに細菌が歯周ポケットの深い部分まで侵入すると、炎症は歯を支える歯槽骨へ広がります。骨は一度失われると自然に元へ戻ることは難しく、歯がぐらつく原因になります。
つまり歯周病は、細菌が感染し、炎症を引き起こしながら組織を破壊していく感染症なのです。
また、歯周病菌は空気中では長く生きられませんが、唾液の中では生存できます。そのため唾液を介して他人へ移る可能性があります。
もちろん、歯周病菌が口の中へ入っただけですぐに歯周病になるわけではありません。歯磨き習慣や免疫力、お口の環境などさまざまな条件が重なったときに発症・進行します。
しかし、感染する可能性がある以上、自分だけではなく家族のお口の健康も意識することが大切です。
◆◇ 歯周病菌はどのように感染するのか
歯周病は風邪やインフルエンザのように咳やくしゃみで感染する病気ではありません。
主な感染経路は唾液です。
例えば、同じ箸やスプーンを使って食事をしたり、飲み物を回し飲みしたりすることで歯周病菌が移ることがあります。また、小さなお子さんへ食べ物を口移ししたり、大人が使ったスプーンで食事を与えたりすることでも細菌が伝わる可能性があります。
さらに、パートナーとのキスなども唾液が接触するため感染経路の一つと考えられています。
生まれたばかりの赤ちゃんのお口には歯周病菌や虫歯菌はほとんど存在していません。しかし、成長する過程で家族との触れ合いを通して少しずつ細菌が定着していきます。
そのため、保護者のお口の環境が良いほど、お子さんも健康なお口を維持しやすくなると考えられています。
もちろん感染したからといって必ず歯周病になるわけではありません。
毎日の歯磨きができており、歯科医院で定期的なクリーニングを受けていれば細菌は増殖しにくくなります。
一方で、喫煙習慣や糖尿病、ストレス、睡眠不足などによって免疫力が低下すると、歯周病菌が活動しやすくなり病気が進行することがあります。
つまり歯周病は感染と生活習慣の両方が関係する病気であり、感染予防だけではなく、お口の清潔を保つことが何より重要になります。
◆◇ 歯周病が全身の健康へ与える影響とは
近年の研究では、歯周病はお口だけの病気ではなく、全身の健康とも深く関わることが分かっています。
歯周病が進行すると歯ぐきの血管から細菌や炎症物質が体内へ入り込み、血流に乗って全身へ運ばれることがあります。
特に糖尿病との関係はよく知られています。
歯周病による慢性的な炎症は血糖値を下げる働きを妨げるため、糖尿病が悪化しやすくなります。一方で糖尿病があると免疫力が低下し、歯周病も進行しやすくなるため、両者は相互に影響し合う関係にあります。
また、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの心血管疾患との関連も報告されています。歯周病菌による炎症が血管へ悪影響を与える可能性があるためです。
高齢者では誤嚥性肺炎との関係も重要です。お口の中の細菌が唾液とともに気管へ入り込むことで肺炎を引き起こすことがあります。毎日の口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防につながることは、多くの医療現場でも重視されています。
さらに、妊娠中の歯周病は早産や低出生体重児との関連も指摘されています。そのため妊娠中も歯ぐきの健康管理は非常に重要です。
このように歯周病は単なる歯ぐきの病気ではなく、全身の健康維持にも大きく関わる感染症なのです。
◆◇ 歯周病を防ぐために大切なこと
歯周病を予防するためには、歯周病菌を増やさない環境づくりが何より重要です。
毎日の歯磨きでは歯と歯ぐきの境目を意識し、歯ブラシだけでは届きにくい歯間部はデンタルフロスや歯間ブラシを活用することで、細菌のかたまりであるプラークを効率よく除去できます。
しかし、毎日丁寧に歯磨きをしていても完全に汚れを取り除くことは難しく、時間の経過とともに歯石へ変化することがあります。歯石は歯ブラシでは除去できないため、歯科医院での専門的なクリーニングが必要になります。
また、喫煙は歯周病の大きな危険因子です。タバコは歯ぐきの血流を悪化させ、免疫機能を低下させるため、歯周病が進行しやすくなります。禁煙は歯周病予防だけでなく、治療効果を高めることにもつながります。
さらに、規則正しい生活やバランスの良い食事、十分な睡眠によって免疫力を維持することも大切です。
歯周病は感染症ですが、毎日のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスによって十分に予防・管理できる病気です。自覚症状がなくても定期検診を受け、お口の健康を維持することが、自分自身だけでなく家族の健康を守ることにもつながります。
監修
いわつか歯科
副院長 岩塚 久
